経営監視vol.12「再生機構 中労委の意向のもと、『掲示板』団交を頻繁に実施」

朝日新聞を調査報道する――
朝日新聞社や関連会社で働く人を守る労働組合「朝日新聞再生機構」機関誌
(2020年4月17日発行)
 

再生機構 中労委の意向のもと、
「掲示板」団交を頻繁に実施。
有期雇用の無期転換制度の新設、コロナ対策強化、
パワハラ対策などを春闘要求。

朝日新聞再生機構は3月12日(木)に引き続き、4月2日(木)夜、中央労働委員会の意向に沿った掲示板問題を議題の中心とした団交を行い、終了時に2020年度の春闘要求を会社側に手渡しました。今回の要求は経済的な要求よりも制度的な要求に重点を置きました。なお、コロナウイルス禍でなかなか団交日程が取れず、本要求の回答および交渉はGW以降になる模様です。
以下に要旨の骨子を説明します。

【有期雇用社員の無期転換について】

 再生機構が経営監視とともに重視して取り上げている問題に、有期雇用契約社員の労働条件の改善があります。2018年8月以降、組合員である短期年俸制契約社員の雇止めをめぐり、あるいは有期契約社員の無期転換制度新設を会社に要求してきました。

 朝日新聞の2018年6月2日付の社説では、「正社員かそうでないかによって賃金に不合理な格差を設けることは許されない」と主張しています。しかし会社は改正労働契約法の趣旨に反し、有期雇用契約社員に対して相変わらず雇い止めをしています。書いていることとやっていることが正反対なのは、ほとんど改善されていません。今回は以下の項目を掲げました。

▽ 有期雇用契約社員を柔軟に無期契約に転換する。
▽ 有期雇用契約の不更新条項を廃止する。
▽ 無期雇用転換者のための同一賃金同一労働に配慮した給与制度を作る。
▽ 現在朝日新聞社内で勤務している有期雇用契約社員、被出向社員に対して、労働環境、無期転換希望の有無に関するアンケートを実施する。

 3年あるいは5年おきに就活をしなければならない契約社員の不安定な境遇を何とか改善すべきですが、まずは、この状況を会社が広く把握し実感する必要と考え、このような立場にある人たちに対するアンケートを実施することを加えました。

【60歳以上の労働条件改善について】

 今回も引き続きこの問題について要求を掲げました。
60歳以降の定年延長者の場合、それ以前とまったく仕事が変わっていなくても、給与が6割もカットされて4割になるのは容認できる問題ではありません。

 また、会社が第1組合と作る「65歳定年制協議会」には、60歳以上の人を代表するメンバーが入っていないので、対象者の意見が全く取り入れられていません。今回の我々の要求は、待遇改善に関する具体的な経済要求ではなく、65歳に定年が延長される以前に定年後再雇用された「シニアスタッフ」を含めた、60歳以上の従業員に対して、勤務状況と生活状況に関するアンケートを早急に実施せよという実態把握を会社に要求しました。

【全従業員に対する新型コロナウイルス対策のさらなる充実】

 新型コロナウイルスの流行に対応し、会社は契約社員を含めた全社員に対して、在宅勤務制度、スライド勤務の拡大運用を認めました。この点は素直に評価したいと考えています。しかし、社員でも感染者が確認され、さらなる拡大が懸念されている現在、報道体制を守るためにも、さらに従業員の健康に十分配慮した勤務体制の確立が必要と考え要求をたてました。

 流行の度合い次第で対応の程度の変化も認めますが、具体的には以下の通りです。

▽ 一般社員以外にも、小型ノートパソコンの貸与や自宅のパソコン(ウイルス対策の確認は必須)での業務上必要なファイルの作成などを許可する。
▽ 在宅勤務と出社業務の組み合わせを認める。
現在、通勤時間の負担軽減ための制度である在宅勤務と出社勤務は組み合わせられないが、感染症流行時では混雑時の公共交通機関利用を避けるため、制度を弾力的に運用する。
▽ 社内感染者が出た場合、会議室を一時的につぶして、社員同士の距離を広げる配置を考える。

【パワハラ窓口の公正化】

 会社のパワハラ防止のガイドラインにある「窓口」は、管理・労務担当補佐、人事部長、管理部長、統括センター管理担当部長であり、会社役員や窓口関係者によるパワハラの場合、公正性の担保が十分とは言えません。これまでコンプライアンス委員会でも経営陣に都合の悪い申告は事務局で握りつぶしてきました。したがって、以下のとおり要求しました。

▽ パワハラ相談窓口の公正化に努める。相談窓口に日本労働弁護団の弁護士を加え、さらに調査には、窓口弁護士の意見を必ず取り入れて行うように規則を改め、受付、調査の公正化に努めるべき。

 なお、中労委の調査期日はコロナの影響で4月6日から6月ごろに延期になりました(期日未定)。
それまで、春闘要求も含め数回の団交を行います。